自分では覚えていないのですが、幼い頃、ホームレッスンの先生のピアノ発表会を聴いて、両親にピアノを習いたいと言ったのがピアノを始めたきっかけになったようです。そんな私に初めてピアノの素晴らしさを感じさせてくれたのは、高校生のときに友達からプレゼントされたマウリツィオ・ポリーニのショパンエテュード集のCDでした。聴いて、ただただ感激。ピアノの世界観が変わったのを覚えています。私は中学校から大学まで東邦で学びましたが、友だちからこうしたプレゼントをもらえたのも音楽高校ならではのことですね。
ピアノ演奏の魅力は自分の考えや感情を作曲者の曲や音を通じて聴く人と共有できるところだと思います。もちろん、それは他の楽器にも言えることですが、私の場合は昔からやっていたピアノを通してその魅力を感じているのです。
大学時代は感性だけで曲をつくっていましたが、それで曲が仕上がるわけはありません。先生にはテンポ、ダイナミクスレンジ、フレージング、和声感などさまざまな面で的確なアドバイスをしてもらいました。事実、それで曲がまとまっていくという実感がありました。私にとって東邦音楽大学は親密で居心地がよく、自分の音楽に向き合うのに最適な場所でした。
東邦高校時代の思い出は、今も私にとって忘れられないものです。多くのクラスコンサートが行われ、演奏会の前には先生や友人たちと楽器を弾き合い、意見を交わし合ったものです。連弾、2台ピアノや他の楽器とのアンサンブル、問題が続出しながらも本番はみんな一生懸命歌ってくれた合唱コンクール…。本当に楽しくて充実した高校時代でした。
演奏会で特に印象深かったのは、大学2年生のときのオーケストラとの共演です。準備万端で臨んだのに、緊張のあまり本番で崩れてしまったのです。これがいい教訓になっています。また、大学3年次のウィーン研修では、多彩な芸術作品に触れ、演奏会を聴くことができました。ポリーニ、チェコフィル、ウィーンフィル、ウィーン交響楽団の演奏、オペラ座オペラ観劇、クリムトやエゴン・シーレの絵画など、ひとつひとつの出会いが今でも思い出されます。
私の抱負は自分の音楽をより良いものに変化させつつ、理想に近づけること。そして将来は音楽指導に携わりつつ、ピアニストとして人前で演奏できたら幸せだなと考えています。後輩のみなさん、音楽の勉強は楽しいことばかりではなく、ときには辛いことも多いと思います。特に思い通りにいかないときの練習や本番は耐え難いものがありますし、音楽にはこれでいいという終わりがありません。でも、その課題や問題を乗り越えたときに見える世界はきっと違うだろうし、音楽は素晴らしいものだと思います。自分自身の目指す音楽を見つけるため、そして追求するために頑張ってください。
東邦音楽大学卒業。ハンガリー国立リスト音楽院修了。松崎玲子、岩澤延枝、砂原悟、神谷郁代、グヤーシュ・イシュトヴァーン、ファルバイ・シャーンドル、ヤンドー・イェネ各氏に師事。東邦音楽大学定期研究発表演奏会にて東邦音楽大学管弦楽団と共演。江戸川新人演奏会、ポーランド大使館EU日本市民交流記念レセプションコンサート、ハンガリー・ブダペスト、ヴァーツ、ヴェスプレームにて東日本大震災チャリティーコンサート、ブダペスト春の音楽祭の日本ハンガリー友好コンサート等に出演。東京のサニーホール、トリフォニーホール小ホール、ハンガリー・ブダペストのナードルテレムにてソロリサイタル開催。第12回エウテルペ国際音楽コンクールGカテゴリー 第1位(イタリア、コラート)。第5回マグニフィカートルピアエ国際音楽コンクール 第1位(イタリア、レッチェ)。第11回メンデルスゾーンカップ ヨーロッパグランドプライズ 第1位(イタリア、タウリザーノ)。第18回アネモス国際音楽コンクール第2位(イタリア、ローマ)。全日本ジュニアクラシック音楽コンクール大学生部門2位(1位なし)等。若手を代表するピアニストとして活躍中。