私が東邦で学んだことは、歌う楽しみでした。
東邦に入るきっかけは、中学の吹奏楽部でトランペットを吹いていたので、最初はトランペットで東邦第二高等学校を受験する準備をしていました。でも、中学の音楽の先生が声楽専攻をされていた先生で、「声楽でもいけるのではないか」と薦められ、歌も好きだったので、声楽で受験することに決めました。それから鍛治先生に中学3年生の半ば位から声楽を習い始めたんです。最初に鍛治先生は、「全部間違ったところから声が出ているが、いい声をしてる。」と言われました。その時は意味がわかりませんでしたが、“いい声”にだけ反応して、喜んだのを憶えています。印象深いのは、大学の定期演奏会でヴェルディ作曲の「オテロ」より、「柳の歌」を歌うことになり、オペラの演技などやったことの無かった私に、侍女に話し掛ける仕草や、場面場面の演技指導をしてくださったことです。私が東邦で学んだことは、歌う楽しみです。学生の頃は今と比べて、技術にとらわれすぎず、好きな歌を歌いたいように、曲の世界を自分なりに解釈して、思いの丈を歌にぶつけて歌っていましたね。高校から大学卒業まで7年間通い、すごく居心地の良い場所でした。東邦の先生方は、一人ひとりをちゃんと見て、大切に育ててくださり、とても感謝しています。
卒業後は、二期会の研修所に入りました。二期会では、それまでやったことの無かったオペラ実習を演出家と二期会の先生方のご指導のもとに学びました。それから終了後に、日本声楽家協会の研修所に入り、現在はその研修所のディプロマ課程に所属しています。そこではオペラの演技や、声楽的な技術、表現を学んでいます。日本声楽家協会のオペラ公演やコンサートにも出演させて頂き、実践でしか学べないことも身についてきたと思います。今の活動は、オーディションを受けたり、所属事務所から仕事を頂いたりしています。来年は二期会でも仕事をさせて頂くことになっています。
現在は8月6日に行われる、アンサンブル金沢、天沼裕子氏指揮のモーツァルト生誕250年 親子で楽しむメルヘンオペラ「小さな魔笛」の稽古をしています。夜の女王での出演です。夜の女王は何度も歌って、思い入れもある役なので、楽しみにしています。また、8月22日に新宿三井ビルで行われ、ズボン役のオルロフスキー公爵役で出演するシュトラウス作曲「こうもり」の稽古も始まりました。オルロフスキーを歌うのは3回目です。それから、11月25日に日生劇場で行われる日生オペラ「利口な女狐の物語」のコレぺティ稽古にも行っています。これもズボン役の男狐です。東邦第二高校の生徒さんたちが、観にいらっしゃるそうなので、頑張りたいと思います。東邦音楽大学の4年生のオペラの授業で、モーツァルト作曲の「コジ・ファン・トュッテ」の授業でフィオルディリージを歌っています。今年3月に東邦の定期オペラ公演「魔笛」でお世話になった4年生と一緒に楽しく歌っています。
今後はもっと技を磨いて、いい歌を多くの方に届けられるようになりたいですね。 挫けそうになっても、向いていないと思い悩んでもいいと思います。ある声楽の先生が、歌は向上する過程で不安になり、いい時ほど駄目だと思える時がある、と言っていました。贅沢に時間を使って、悩んで、続けることが大切だと思います。そうすると、思っても見なかった経験をできる時もあります。近い将来、みなさんと共演できる日を楽しみにしています。
東邦音楽大学卒業。鍛治辰雄、高橋大海、藪西正道の各氏に師事。これまでに「魔笛」夜の女王、「コシ・ファン・トュッテ」フィオルディリージ、「ドン・ジョヴァンニ」ドンナエルヴィラ、「こうもり」オルロフスキー等を演じる。二期会公演「魔笛」夜の女王のアンダースタディを務める。2006年九州交響楽団ニューイヤーコンサート、およびニューフィル千葉ニューイヤーコンサートに出演。七回の公演を務めた。東フィルクラシック講座に出演。日本声楽家協会主催「魔笛」夜の女王で出演。東フィルと共演する。東邦音楽大学定期演奏会「魔笛」の夜の女王で客演。仙台赤煉瓦コンサートにて仙台フィルと共演。2006年、11月25日、日生劇場にて日生オペラ「利口な女狐の物語」雄狐役で出演予定。東邦音楽大学研究員、日本声楽アカデミー会員、二期会準会員。