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講習会・セミナー

第2回東邦ピアノセミナー報告

講座当日のスケジュール ~平成20年7月26日(土) 会場:大塚キャンパス

午前
全体会10:30~12:00 「時代様式に基づいたピアノ演奏とは-2」 担当:砂原 悟
午後
テーマ別分科会13:00~14:30
「導入期指導教材の研究 ~生涯音楽に親しむために~」 担当:國谷 尊之
「モーツァルトのピアノソナタ ~その人生と音楽~」  担当:上田 京
「今新たなピアノ演奏を求めて ~ピアノアンサンブルの魅力と意義~」 担当:田中 梢
ピアノ個人レッスン14:45~17:00(一人45分)

昨年に続いて2回目となりましたが、今回はどのような主旨で行いましたか?


春日:
最近大学と社会との関わりは大きな問題になっていますね。そこで本学ピアノ部会では、大学という教育機関から情報提供という形で今までこの様な機会が少なかった卒業生、自宅ピアノ指導者の方を対象にした学術的なケアを行うセミナーを企画しました。
どんな分野においても“基礎を身に付ける”ことが、非常に重要であると考えられています。では、私たちにとって“基礎”とは何なのか?
“演奏技術”そして“教養”ですね。一口に教養と言っても、広くて深いものですが、“音楽理論”と“歴史”といって良いのではないでしょうか。本学では、学生に対しても時代様式に基づいた演奏というのを柱に指導しています。そこで、東邦ピアノセミナーにおいても大きなテーマとしています。


砂原:
ピアノは幼少時から始めて年をとって弾き続けることができる。他の楽器に比べると永きに渡って勉強できるという意味で、ピアノを勉強することは、生涯教育という観点からも重要ではないでしょうか。そういう意味で今回2回目のピアノセミナーにたくさんの人が来て頂いたということは本当に意義があるのではないかと思います。


上田:
“基礎”と“生涯教育”、どちらもすごく大事な部分ですよね。ピアノは非常に奥の深いもの。曲も豊富でいろいろな意味で生涯勉強してもやりつくすということがないくらいですから、大学を出てからさらに勉強しようという方たちを対象にセミナーを行うことはとても意義がありますよね。


春日:
卒業後、社会にでてからは仕事や家庭となかなか自分の為に時間を使うことが難しいものですよね。ですから年に1度、自分を高めるために美学を求めて参加して頂けるのは嬉しいことです。



全体会はいかがでしたか?


砂原:
昨年にも増してたくさんの方にお越し頂き、皆さんの関心の高さを感じました。皆さん受講姿勢がとても熱心で、学生とはまた一味違い“目的意識”がはっきりしていました。学生達は、自分の進路や自分の行くべき道というのを求めているような感じが多いけれども、一般の方ははっきりと“こういうことが知りたい” という目的意識がはっきりしているような空気を感じました。


春日:
そうですね、貴重な時間ですものね。今年もハングリーな精神が高いなぁと感じましたね。


砂原:
全体会の内容は、時代様式ということでバロック、古典、ロマンという時代をそれぞれ代表するような書物を取り上げ、そこに書いていることの共通点や違いなどについてお話しさせて頂きました。特に今回取り上げたチェルニーについての本は、この本と出会って僕自身のチェルニー観が変わったくらいです。僕らが小さい頃から先生に習ってきたことがその中にたくさん含まれていて、本当にそういうものが伝統として脈々と受け継がれているのを肌で感じました。読みながら自分の中で「あ、そうだ!そうだ!」と肯定、そして頷きながら読んでいて自分がやってきたことが本当に伝統ということに則っていたんだなぁと。


春日:
そうですね、非常に学術的でまた学生とは違うステージでの講座でした。ですから少し高度でしたがとても分かりやすかったです。皆さんすごく集中されていましたね。ただ時代様式と言っても深くて広いものですから、講座の90分で言い尽くせるものではないですよね。チェルニーに関しては私自身も「こんなロマンティックなことも言っているんだぁ」という発見もあり、いわゆるピアノの基礎訓練のイメージを払拭する印象も受けました。先生による演奏も良かったですね。


砂原:
ありがとうございます。卒業生からは、卒業してからますます面白くなった、また勉強したくなったとかという声をよく聞きますよね。奥が深くなればなる程、興味が湧くんですね。


春日:
そうですね、様々なことを知れば知るほど悩みや疑問点もどんどん増えていくと思うんです。自分で求めていかないと解決には近づきませんからね。そして計算と違って解答はひとつではありませんから、講座では、積極的にどんどん吸収して頂きたいです。



では春日先生、3つの分科会についてお話をお願いします。


春日:
はい、午後から3つのテーマの分科会を開講しました。今年は、アンケートを参考に「導入期指導教材の研究~生涯音楽に親しむために~」國谷尊之先生、「モーツァルトのピアノソナタ~その人生と音楽~」上田京先生、そしてもう一つは「今新たなピアノ演奏を求めて~ピアノアンサンブルの魅力と意義~」田中梢先生にそれぞれ担当して頂きました。今日は、上田先生に来て頂きましたので、上田先生が担当の講座についての主旨や講座の感触をお話し頂ければと思います。


上田:
モーツァルトということで、何を中心にお話しようかと考えました。そこで、演奏する上でも指導していく上でも一番身近なピアノソナタを取り上げました。純粋なピアノソナタ18曲を見ながら、モーツァルトの生きた時代、人となりや生涯を年代順に紐解きながら、モーツァルトを身近に、親しみを持って感じられる講座を心がけました。

モーツァルトは小さい頃から旅に旅を重ねていた、現代と比べると想像を絶する程の過酷な旅をしながら研鑽を積んだわけです。その親の執念とそれに応えたモーツァルトの才能を、我々にも当てはまるものとして強く実感します。また、彼の晩年には、家庭に当たり前にあったチェンバロという楽器がピアノフォルテに変わっていく、この時代の楽器の変遷もお話しさせて頂きました。モーツァルトの曲を美しく演奏するために、当時のピアノがどんなものであったのかということを知ることは重要なことです。そして、最後にソナタの1つを例にあげて、どのようにすればモーツァルトの音楽を自然に美しく弾くことができるか、音色、表現について解説し、またソナタ形式についても簡単に復習しましたが、いかがでしたでしょうか?


春日:
講座は非常にテンポが良くて引き込まれました。演奏を交えてということで、皆さん興味深くお話と音楽という両面から吸収することができたと思いますし、今上田先生がお話しされたようにピアノ演奏にとって鍵盤楽器の変遷を理解することは非常に大切だと思います。演奏はもちろん充実した講義内容で、あっという間の90分でしたね。



受講生の反応はいかがでしたか?


上田:
講座後に伺った話ですが、モーツァルトの生涯や演奏曲の時代背景だけでなく、講座の主旨でもあった「モーツァルトの全体像がとてもよく感じられた」と言って頂きました。これは一つの成果かなと思いましたね。


春日:
自分が思っていたことが確認できるのは、自信にも繋がりますよね。



他の講座はいかがでしたか?


砂原:
僕は、國谷先生の講座を拝見しました。特にスキャモンという方の子供の発達曲線図を基に器官ごとの発達についての内容が印象に残っています。小さい頃は、読譜といったまだ未発達な能力を詰め込むよりも聴いて弾くようなタイプの教え方をした方が効果的なこと。徐々に未発達の部分が伴ってきて、発達してきたら、それにあった教え方に変えるというように子供の発達に合わせた教え方を提案されていました。また、例えばバイエルが日本では非常にメジャー、でも他国ではほとんど使われていないメソッドであるというように世界的な観点から様々な教材を見ていく必要性についても情報の多い現代では必要不可欠であるということをお話されていましたね。いろいろな新しい考えを取り入れた教材の紹介もして頂きました。


春日:
田中先生の講座は、いろいろな小道具を使ってアンサンブルを体験する参加型の講座。かなり盛り上がっていました!音楽教室のおさらい会や発表会でも今、アンサンブルを取り入れている場合が多いですね。今は、独奏のみならず、いろいろなアンサンブルや共演といった呼吸をあわせて音楽を創っていくということも非常に盛んになっていますね。アンサンブルは“呼吸が大事”、楽しいばかりでない大切なお話もされていました。また曲をたくさん紹介なさっていたのでお聴きになった方は、「この曲、こういう子供の為に使ってみよう!」というヒントになったと思います。子供もアンサンブルで何か役割をもつことによって大きく成長がみられることもありますものね。この他にも大学院生のピアノアンサンブルの演奏もありました。この講座は本当に全員参加型の活気のある講座でした。



他の講座はいかがでしたか?


春日:
次回は、7月26日(日)に開催します。


砂原:
毎回26日!覚えやすい!お早めにスケジュールを空けておいて頂けると嬉しいですね。


春日:
全体会は、「時代様式に基づいたピアノ演奏とは-3」ということで上田先生にお願いすることになりました。


砂原:
楽しみですね!どんな内容になるんでしょう?


上田:
まだ具体的には決めていませんが…、調を題材にしようかと考え中です♪


春日:
分科会は、國谷先生の「指導教材の研究-2」、作曲家シリーズでは「“シューマン”について」大場先生、参加型の講座としては「身体とピアノ演奏について」を私が担当することになりました。ご自分のために時間を使うことは貴重なことですから、私たちもそういう意識をもってみなさんに提供してきたいと思っています。ご自分の美学を求めて頂きたいです。


砂原:
それキーワードですね、“美学を求めて”。


上田:
ちょっとしたきっかけで、気付くことがたくさんあると思うんです。皆さん日頃いろいろな疑問や興味をお持ちだと思いますが、1年に1度こういうセミナーに来てくださることによって新しい見方や考え方を発見する、そんなセミナーにしたいと思っています。


春日:
そうですね。一人で挑戦することや勉強することは勇気が出なかったり、消極的になりがちですが、勇気を出して、出向くことで「これだけ同じような仲間がいるんだ」と触発されることもあると思います。私たち教員は、仕事としては大学生に教えていますが年令に限らず、演奏や指導についての悩みが尽きないのは同じです。同士としてお互いに頑張りましょう!


砂原:
ピアノを弾くことを永く!楽しんで!


春日:
ピアノは楽器の王様、“広く、深く、永く”引き続き第3回もお互いに勉強を続けていきましょう。



全体会
「時代様式に基づいたピアノ演奏とはー2」 講師:砂原 悟

時代様式を考える、というテーマに沿って、今回は、バロック、古典、ロマンのそれぞれの時代の演奏様式を著したと見られる3人(C.P.E.バッハ、テュルク、チェルニー)の考え方にスポットを当てました。中でも次の3つのことがら、「拍節、音の長さ、テンポの動かし方」に着目して、それぞれの時代の考え方を特徴づけてみました。



1.拍節については、テュルクの記述から旋律の扱いにおいても、かなり強く拍節の強弱の影響を受けることがわかりました。それに比べると、チェルニーの時代(ロマン期)ではより旋律線のほうを重要視しているように思えます。

2.音の長さの扱いは、時代が下るに従ってレガート重視の傾向が顕著になってくることがわかります。

3.テンポの動かし方については、特にチェルニーの記述が詳しく、とりわけどのような場面でゆっくりすべきかについて整然とした意見を述べています。また多くの譜例を挙げているので、テンポを動かす理由やその程度についても理解することができます。


今回の講座から、より現代に近いチェルニーの著作がもっと注目されるべきであると感じました(チェルニーの演奏論だけ邦訳がありません)。

テーマ別分科会
「導入期指導教材の研究~生涯音楽に親しむために」 講師:國谷 尊之

わが国では4~5歳の幼児期にピアノを習い始める方が多いのが特徴です。この「ピアノ導入期」にどのような経験をするかということは、その後の音楽人生に計り知れない影響を及ぼします。今回この分科会では、この時期に使用する教材について新旧の比較を交えながらお話しました。わが国で広く使われている「バイエル教則本」は、実は日本以外ではほとんど使われていません。日本が明治時代から「バイエル」をずっと使い続けているのに対し、諸外国ではこのテキストが時代遅れとなるような指導法の重要な変化がおこったのです。



その要因は幼児の発育・発達段階についての研究の進展でした。講座ではR.スキャモンの研究を紹介し、それに裏付けられた欧米の導入期指導が手指の運動性よりも聴覚や感性をみがくソルフェージュ的な指導に重点を置いていることをお話しました。国内外の最近の教材はこうした考え方が取り入れられています。今回はその具体例として、江口寿子著「すくすくミュージックスクール」およびバスティン一家による「バスティン・メソード」のシリーズを紹介。熱心にメモを取りながら聞いてくださる方が多く、このテーマへの関心の高さがうかがえる分科会でした。


テーマ別分科会
「モーツァルトのピアノソナタ ~その人生と音楽~」 講座:上田 京

「モーツァルトのピアノ音楽を美しく弾くために大切なことは何か」をテーマに、その時代に完成したソナタ形式を再確認しながら、楽曲の分析と共に時代背景、人生や人となりに焦点を当てて解説を行った。幼少の頃より実に人生の大半を費やした旅の足跡を追いながら、ピアノソナタ全18曲をみた。作品を歴史的な流れの中でとらえることにより、その音楽の表面的な美しさを通り超えてより本質的歴史的な存在意義とその音楽が登場した必然性を感じることができる。


モーツァルトの時代は、いろいろな意味において時代の変遷期であった。貴族社会から市民中心の社会へ、ポリフォニーの音楽からホモフォニーの音楽へ、チェンバロからピアノフォルテの時代へ。特に、音質を考える上で当時クラヴィーアと総称された3つの鍵盤楽器(チェンバロ、クラヴィコード、ピアノフォルテ)がどのようなものであったかを知ることも非常に重要である。


モーツァルトの演奏の難しさは、演奏者に許される表現の幅の中で、非常に繊細なタッチと微妙な表情の音を駆使して煌びやかな王朝文化の輝きを創造するところにある。その為の基本を、演奏を交えて具体的に紹介した。


テーマ別分科会
「今新たなピアノ演奏を求めて~ピアノアンサンブルの魅力と意義」 講師:田中 梢

分科会「ピアノアンサンブル」は昨年に続き2回目となりますので、今年は2台ピアノを中心にすえて行いました。対象をピアノを勉強している方とピアノを教えている方としましたので初心者で弾ける曲から高度なレヴェルの曲まで幅広い教材を集めました。ピアノを使っていかに音楽の楽しみを作り出せるか、4手に限らず6手・8手・20手、さらに身の回りの空き缶などをリズム楽器に使って、ピアノを弾けない方までを巻き込む全員参加型のアンサンブルも試演して見ました。又大人数でのアンサンブルや大縄跳びのように出ては入るアクティブなアンサンブルを試演してただ座って弾くばかりでない様々なアンサンブルの形を披露しました。この会を受講なさった方々が今回の教材をヒントに「アンサンブルの楽しみ」をさらに発展させ広めてくださる事を願っています。又アンサンブルにはソロピアノへと応用できる要素がたくさんあります。それが共演者との「呼吸」であり共に奏でる「共奏」であり語り合う「協奏」であると思います。今回は「メロディー」と「リズム」と「即興」という観点で2台ピアノ作品を試奏しました。ソロという孤独な作業を離れてアンサンブルの素敵な曲を通して共演者と共にお互いの音楽を享受しつつ高めあえたらと言うのが前回今回の狙いでした。受講なさった方が御自身の演奏に新たな切り口を見つけられる事を願っています。


※第2回ピアノセミナーの内容につきましては、レッスンの友社出版“レッスンの友10月号・11月号”に掲載されました。

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